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花しるべ

「桜御膳」内のFiction別館サイト。取り扱いはポップンミュージック(非公式)が主。 初めての方は〔はじめに〕をお読み下さい。  
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見方を変えれば、裏だって表

 

「・・あーらら、38.9℃。こりゃ完璧に風邪だねェ~お気の毒様」

透明人間の澄んだ、しかし緊張感の全く感じられない声が聞こえた。



 

 

 

 

 


 

 

 

+++見方を変えれば、裏だって表+++

 

 

 

 

 

 

 

「そ、そんな・・・。だってまだ、洗濯物取り込んでないし

2階の窓拭きもしてないッス。他にもやらなきゃならない事が沢山――

「こーら、駄目だよ病人は寝とかなきゃ。ほら、早く横になる」

 

そういって嫌がる俺を無理やりベッドに寝かしつけて、布団を被せる。

本当にこの細い体から、どうやってこんな力が出るのだろうか。

それとも風邪で体力が弱くなっているから、強く感じているのかもしれない。

 

スマイルと2人で雑誌の取材を受けた後から、少しの熱っぽさは感じていた。

元々体は丈夫だったし、すぐに良くなるだろうと思って放っておいたのだ。

しかし城に帰っても熱は下がる気配がなく、寧ろ辛くなっていく。

それをスマイルが素早く察知して熱を計りだし――現在に至る。

 

 

体がしんどいのは事実だし、スマイルの言ってることは至極まともなのも理解できる。

始めは忠告に従って、素直に寝ようとしたのだ。

しかし。

それでもだ。

体がいうことをきかなかったのである。

 

 

 

 

+++

水分補給のための飲み物を準備してきてくれたスマイルが部屋にやってきた。

 

「何だ、まだ寝てないの?確かにまだお昼時だけど、体調悪いときは寝ないとー」

「いや、寝る時間帯じゃないってのも関係してるんスけど・・・」

「なぁに?何か別に理由があるの?」

「・・・やり残した家事のことが気になって気になって、眠れそうにねぇっス」

 

 

・・・君っていう人は、本当に家事大好き人間だねぇ・・・

俺が思いを打ち明けたその人は、何とも言えない表情を浮かべた。

半ば呆れられたようだが、ある程度は覚悟していた反応である。

しかしそこからのスマイルの行動は、俺には意外なものだった。

 

「いくつあるのさ?やり残した家事は」

「え?えっと・・・洗濯物の分類と――」

 

部屋にある紙とペンを使って、俺の言葉を1つ1つメモしていく。

俺は残っている家事の内容を伝えた。

 

「他には?出来ればやっておきたいなーってものは、ないの」

そういうので、更にいくつかの項目を述べる。

 

 

合ってるか確認して、と差し出されたメモを読む。記入漏れはなかった。

「この仕事が出来ていれば、君は安心して眠れるんだね?」

「はぁ、まぁ・・・そういうことになるっスね」

「オッケ。じゃあ後はボクが全部やっておくから、アッシュ君はゆっくりお休み」

 

 

そういってドアを閉じ、彼は別の場所へ向かっていった。

スマイルは何だかんだと普段からよく料理以外の家事を手伝ってくれている。

彼なら大きな失敗もないだろう。

家事を任せるのは申し訳ないが、今回は好意に甘えることにした。

 

 

 


+++

トン トン

 

 

アッシュ君、寝てる?

 

そっと入ってきたスマイルの声と音で目が覚めた。

窓の外の空色を見ると、どうやら夕暮れになったようだ。

 

「もうすぐ日も暮れるし、1回起きて水分補給と熱計ろうと思って」

あ、メモした家事は全部やったから心配しないでよいヨー

 

スマイルはそういいながらもてきぱきと準備をすすめる。

基本器用だからか、この人は何やっても手際が良いよな・・・なんて素直に感心した。

 

 

 

38.0℃。ちょっとは下がったみたいだねェ。でもまだちょっと高いかな?

これじゃ料理は難しいし・・・」

 

確かに昼より具合は良くなったが、料理をするには不安が残る。

夕食は作り置きのものを温めて貰うよりないだろう。

そのお願いをしようとしたその時

「仕方ないねェ・・今日はボクが晩御飯作るよ。

アッシュ君、きみのエプロンと調理道具貸してねー」

 



 

部屋にまたもや、緊張感の全く感じられない声が響いた。

 

 

 

 

「ス、スマイルが!?」

 

勢いよく起き上がりすぎてベッドから落ちそうになった。

まだ全快とはいえない体調のせいか、視界がくらくらする。

しかしこれだけは伝えなければ。

 

「スマイルが実験と称して怪しい物体を調合していることはあれど、

台所でまともな調理をしている姿を見た記憶はないっスよ…。

正直、不安過ぎるっス…」

 

「失礼だなぁ。そんなに心配しなくても大丈夫だヨー。

君がやって来るまで、ユーリにご飯作ってたのはボクなんだから」

「あ・・・」

 

 

病人は自分のことだけ考えて、大人しく寝てなさーい

そういい残してスマイルは部屋を出て行った。

 

 

 

ぱたぱたと冷蔵庫の開け閉めをする音 とんとんと包丁を動かす音

かちゃかちゃ くつくつ ことことこと

確かに台所から聞こえる音は、リズミカルで、聴いていて不安なものではなくて。

静かで心地よい音に耳を傾ける内に、どうやら俺はまた眠ってしまったようだった。

 

 

 

 

 

+++

 

 

 

あ、ユーリお帰りー

アッシュ君風邪引いたみたいだから、今日の晩御飯はボクが作ってみました★

・・・その様だな。野菜の切り方を見ればわかる。

 

なんかねー取材の帰りから具合悪くなってたみたい。

今は部屋で寝てるから、そっとしといてあげてヨー?

この所、曲作りのために毎晩無茶してたし、疲れが溜まってたんだろーね。

あの子はなかなか、疲れたって口に出さないから・・・

あんだけ周りの皆に気を遣ってたら、そりゃ熱も出てくるよ。本当に頑張り屋さんだ。

 

確かにな。私の目の前にいる人物も、あの犬の百分の一でも真面目に仕事に

取り組んでくれれば私としても助かるんだが。

んー?なーに良く聞こえなーい。誰のことー?

人参を一々自分の好きなアニメのキャラクターの形にくり抜くような奴の事だ。

あぁ、それ凄いでしょう?煮込んでもフォルムが崩れないように苦労したんだよね。

 

全く・・・時間と才能の使う箇所を間違っているとしか言えないな。

とにかく、頂くとしよう。お前の作った料理は、久しぶりだ。

 

 

 

+++

「アッシュ君、具合はどう?

ちょっとでも食べたほうが早く治ると思って持ってきたんだけど」

 

 

相当深い眠りに落ちていたようだ。カーテンの隙間からは月の光がやさしく漏れている。

起き上がってみると、前ほど体のふらつきと熱っぽさが無くなっている。

症状はかなり回復に向かっている様だった。

 

「ありがとうっス。お陰でかなりましになったみたいで。

持ってきてくれた料理、頂きますね」

 

 

料理の味は想像していたほど不味くなかった。

それどころか、かなり美味しいといえる。

味の感想を素直に口にする

 

アッシュ君に言って貰えると嬉しいねー

ヒヒ、といつものチシャ猫笑いをしてみせた。

 

 

「スマイルがこんなに料理上手いなんて、知らなかったっス。

この腕だと、昔のユーリも大満足だったでしょう」

「イヤ、全然?彼は全く食べてくれなかったよ」

「え・・・?」

 

 

 

そういやアッシュにはまだ言ってなかったっけ

椅子の角度を変え、外の景色に視線を外しながらスマイルはぽつりぽつりと話し始めた。

 

 

昔のあの人はねぇ、ぜーんぜん食べなかったの。本当に。一口も

人間の血を吸うわけでもない。なのに他の食糧を口にしようともしない

彼は生き続けることに執着していなかったんだ

 

ボクはユーリに生きていて欲しかった。だから様々な料理を作った

でもあの人は食べないんだ。ちらと料理を見て『食べる気がしない』って

 

じゃあ、どんな料理なら食べてくれるのか色々試してやる!って思って

色々な国の料理を勉強して、作ってみた。調味料も研究した

  

それでも・・・ユーリは食べなかったの

 

 

彼の食欲をそそるかなーと思って、料理にボクの血液を入れた時は怒られたねぇ。

ボクが相当思い詰めてたのが伝わったのか、そっからは食べてくれるようになったけど

 

 

だから、ユーリがアッシュの料理を何も言わず食べた時は

ちょっとだけ、いや結構アッシュに嫉妬したよ。

ボクはユーリに食べてもらうのに、あんなに苦労したのにーって

 

 

 

 

 

 

無意識なのか分からないが、真面目な話をする時

スマイルは俺のことをアッシュと呼ぶ。

その事を言おうかどうかいつも迷うのだが

この方がスマイルの気持ちが分かりやすいので、そのままにしている。

 

 

いつの間にか体の向きは戻っていて、スマイルと目が合った。

「でも実際に君の料理を食べてみて、ボクもすぐに好きになった。

何故だか分かる?

 

 

・・・アッシュの料理はねぇ、暖かいんだよ」

 

「おいしい料理を作るだけの料理人なら世界中にごまんといる。

でも、その中で暖かい料理を作れる人は極僅かだとボクは思う。

皆においしい料理を食べてもらいたい。

そう強く想っている人だけが作れるからネェ」

 

 

つまり君は、心が暖かいのさ

 


 

「だから、早く元気になってボク達にまた暖かいご飯を作ってね?

ユーリもボクも、君の料理の大ファンなんだからさ」

 

 

 

 

 

 

そう言ってスマイルはいつもより少し、優しく微笑んだ。

 

 

 




 

 

 

「・・・ス、スマイル・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

あぁほらもぅ、泣かないで早くお食べ?

アッシュの頭をわしゃわしゃと、スマイルが撫でた。

 

Fin.

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

スマイル「あ、治ったら早く屋根裏の修理とベッドカバーの修繕宜しくね?

ボク料理とか掃除は好きだけど、力仕事と裁縫は苦手だから~」

アッシュ「・・・」

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