おかえり、ボクらの思い出達。
+++かの思い出は、今も輝きを放って+++
綺麗好きは時として悲劇をもたらすものなのだろうか。
天井から床まで綺麗にしないと気が済まない狼男が本棚の上に手をかける。
その瞬間、バランス悪く積まれていた荷物は重力に逆らうことなく落下してきた。
ズドド…
ガツッ
本のようなものがアッシュの後頭部を直撃した。
強烈な痛みにうっすら涙を浮かべながら、何が自分に当たったのか確認する。
「何スかね、コレ…?」
「アッシュー。何かさっき凄い物音したけど大丈夫ー?」
どこからともなく、ひょっこりとスマイルが後ろに立っていた。
「何とか。あ、スマイル。これ何か分かるっスか?」
「あー、ソレ、チェスの対戦棋譜だよー」
わー懐かしい、と言いながらアッシュの手元から棋譜をひったくる。
まだ痛む頭をさすりながら、アッシュは思った通りのことを口にした。
「スマイル、チェス出来たんスね」
「そうだよー。昔、ユーリとよくやってたんだ」
全然勝てなかったけどねー
そう呟きながら、スマイルは過去の対戦記録をパラパラとめくった。
その顔は、懐かしい過去を思い返す時のものである。
「勝てないのが悔しくって何度も挑戦してねぇ…
少しずつボクの力も付いて引き分けが多くなってきて、
今度こそ勝つ!って時にあの人、目が覚めなくなったの。200年程。
ボクは勝ち逃げされっぱなしだよ。大人気ないよねー」
まぁ昔のことだから、ユーリが覚えてるのかどうかも分かんないけど。
それにしてもあの時はホント悲しかったなぁ…
また一人ぼっちになった気がしたよ。それも突然だったから余計にね。
スマイルの言葉はアッシュに話しかけるというより、
次第に自分自身に向けられたものになっていった。
本棚に寄りかかり、ゆっくりと棋譜を捲っていく。
1つ1つ、対戦の思い出を噛み締めるように。
「あ、スマイ…ル」
声をかけようとして、アッシュは止まった。
声をかけてはいけない、かけるべきではない気がしたのだ。
自分には知らない2人の記憶があることは仕方のないことだ。
しかし大切なのはそれを羨み妬む事ではない。
これから3人の思い出を沢山作っていけば良いのだから。
そうだ、今日のお菓子はチェス盤みたいなチェッカーズクッキーにしよう。
2人の思い出話に花を咲かせる小道具になることを期待して。
Fin.
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アッシュが青い!若い!(そうしてるのはお前だろう)2人には自分が入り込めない
くらいの
結構暗い子だ/笑
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