＋ birth birth birth ＋２

第二話。贈る側の気持ちが、何よりのプレゼント。

君に贈るプレゼントを考えるのも楽しかったけど

365日の中、その1番大切な24時間を

君のとなりで過ごすのを許された事を幸せに思うよ。

願わくば、ずっとずっとこれからも、となりで君の誕生日を祝いたいな。

｢よ…っと｣


僕の朝ははっきり言って早い。
平日は学校があるから勿論の事なんだけど、起きる時間は休日でも大抵同じ。

でも僕の隣の部屋の主は休日になるとまるでスイッチが切れたかのように眠りこける。
だからいつも起こさないように、静かに起きる癖がついていた。




あーぁ、どうせ今日もレオは部屋に籠もりっ放しなんだろうな。
・・あいつ、本当に何やってんだろう？





ふとそこで、僕は机の上に見慣れない袋が置いてあるのに気付いた。


｢…何コレ？｣



無地の深い紺青色の小さな紙袋が１つ、無造作に置かれている。
ひっくり返してみたけれど、何も書いてある様子はない。


カサ・・・
　カサカサ


中を開いてみると、何か小さなものが手のひらに落ちてきた。




｢・・・・MD？｣
しかも【非売品】って書かれたシール付き。何じゃコリャ？


僕はとりあえず、そのMDを聴いてみる事にした。
もちろん、隣人を起こさないように慎重にね。

MDはすぐに機械に吸い込まれ



そして
聴いた事のないメロディを流しはじめた。







　･･え　？


コレひょっとして、レオの声？






にわかには信じられなかったけど、それは確かにレオの歌声だった。
嘘だろ？あのレオが歌ってる？
SEに溜め息を入れるのでさえイヤだとあんなに大騒ぎしたレオが？



レオは歌が下手って訳じゃない。寧ろ凄く上手いと僕は思っている。
ただ自分からすすんで歌いたいとは思っていないようで
今まで作った曲は皆、僕が歌ったものだ。
1度くらいレオが歌ってみてよと頼んだ事もあったが
恥ずかしいから絶対にイヤだという答えが瞬時に返ってきたので諦めていた。


そんなレオが、歌ってる？




先程の紙袋をもぅ1度開くと、中に手紙が入っているのが見えた。
そこには紛れもないレオの字で、こう書かれていた。



Happy Birthday★　Sugi　!!

誕生日おめでとう。
今年はスギに何を贈ろうと散々迷ったけど
こんなものにしてみました。


まぁ、ある意味で凄いレア物でしょ？
めったに聴けないボクの歌声がたっぷり入ってるんだから。
普通なら絶対こんなことしないし、する気にもならないけど
ま、他でもないスギの誕生日だから特別に。
(もぅ2度とやるもんか！って決めたけどねー)



P.S

にしてもアレだね。全部1人で曲作るのって疲れるものなんだね。
スギの誕生日に間に合うかどうかひやひやしたよ。



今現在　スギの誕生日まで3分前


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　Reo


あぁ、これでやっとレオの言っていた意味が分かった。
そして、僕が手伝うのを許されなかった訳も。




レオはこの数週間、ずっと｢コレ｣を作っていたのか。









まだ｢もぅ良いよ｣とは言われていないが
僕の足は自然とレオの部屋へ向かっていた。




｢・・・レオー？｣



ドアを開けると部屋の中が見えた。
部屋の中は何というか…とんでもないことになっていた。
楽譜がそこかしこに飛び散らかってるし、ギターもケースに入れず放りっぱなしだ。
机の上には紙袋の中の手紙と同じ便箋と同じ色のペン。
まぁ、ゴミ箱の中にチョコの包み紙の山が出来ているのはあいつらしいけど。

そしてベットの上には
布団にくるまって熟睡しているレオがいた。











起こさないようにそっと近づき
静かな寝息を立てているこのプレゼントの贈り主に囁いた。
















｢ありがとう、レオ｣



Fin