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花しるべ

「桜御膳」内のFiction別館サイト。取り扱いはポップンミュージック(非公式)が主。 初めての方は〔はじめに〕をお読み下さい。  
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真夏の夜の・・・(Deuil)

これは、ある夜に起こった悲劇。

「あ…いけね、忘れてたッス」
 
 
これは、ある1人(匹)のお話。
 
 
 
 
 
 
 

-真夏の夜の・・・-
 
 
 
 
 
 
 

明日の為、目覚まし時計をセットしていた途中でアッシュはふと気付いた。
明日はライブ会場の下見の後、次の新曲の打ち合わせの為朝早く城を出なければならない。
つまりいつも以上に早起きをして朝食の準備をしなければいけないということだ。
 

「炊飯器のタイマーも変更しとかないといけねぇッスね…」
 
 
 
しかし今現在の時刻は午前3時を過ぎている。いくら夜行性のあの2人でも
もぅ寝ている時間だろう。
 
 
 

この城は天井が高く、音が良く反響する。こんな夜中なら尚更だ。
今迂闊に廊下を歩いたら音で2人を起こしてしまうかもしれない。
だが炊飯器のタイマーを変更しておかないと朝2人に朝食が用意できない。
起き抜けで不機嫌であろうユーリを宥めすかす為明日の朝食は彼のリクエストで和食なのだ。
朝1つでも彼の気分を害する様な出来事が起これば即予定を全てキャンセルしかねない。
まさか、と皆は思うかもしれないがそんな常識が通用しないのがユーリである。
 

今少しの勇気を出して台所へ向かうか、明日怒られるのを覚悟で寝るか。
果たしてどちらを選ぶか?
 
 
 

そんなことは決まっていた。
 
 
 

ギイィィィ…
 

音が出ない様、ゆっくりと部屋のドアを開け、廊下へと出た。
抜き足差し足 、まるで盗人のような歩き方である。
一応彼だってこの城の住人なのだからもっと堂々と歩けば良いものなのだが、
やはり城の主の癇に障る行為はしない方が良いだろう。
否、してしまうと命の危機すらある。
 
 
 

ひた…ひた…ひた…
 
 
 

いつもの倍以上の時間をかけて、ようやくアッシュは台所へと通じる廊下まで出た。
それにしてもこの城は廊下が長く、どうしても薄気味悪い感が滲み出ている。
住んでいるのが妖怪ならその家も、なのであろうか。
そう思うと心なしか窓の外の鳥の鳴き声も不気味に聞こえる。
お化けが出てくるのには最高のシチュエーションだ。
 

「ま、例えお化けが出てきたとしても驚かない年ッスけどね…」
 

そう言いながらアッシュは台所へのドアを開けようとした。
 
 
 

その時である。
 
 
 

ガタンッ   ガサガサッ
 

ドアの向こうにある部屋…リビングから何かが落ちるような音がした。
しかも何やらぼんやりとリビングから明かりが漏れているではないか。
 

「・・・・!」
 

先程の台詞を撤回して、アッシュは自分の部屋に逃げ帰りそうになったが何とか思い留まった。 
 このドアからじゃなければ台所へは行けない。
台所に行かなければ炊飯器のタイマーを変更出来ない。
タイマーを変更出来なければ明日の朝食が危うい。
つまりは明日の自分の生命が危うい。
 

今少しの勇気を出してドアを開けるか、明日ユーリに殺されるか。
果たしてどちらを選ぶか?
 
 
 

そんなことは決まりきっていた。
 
 
 

キ・・・ィ
 

音を立てないように細心の注意を立てながらリビングを覗き込むとアッシュは
声にならない叫びを上げそうになった。
 
 
 

リビングのテレビが付いていていた上、
ソファの上に何やら白いものが浮いていたのだ。
 

(ヒ!?何スかアレはっ!?)
 

出来る事なら今すぐにでもドアを閉め逃げ出したかったのだが
あまりの恐怖に足がすくんでしまい、その場から動く事も
目をそらす事もかなわない。
 
 
 

(うぅぅ勘弁して欲しいッス俺実はお化けだけは苦手ッス…!!)
 

…自分も一応人間達に恐れられている狼男だと言う事も忘れて、
アッシュは今の状況をどうする事も出来ず、されるがままその場に立ち尽くしていた。
 
 
 

(………え…?アレってもしや…)
 

アッシュはソファの上の白いもこもこの右上空中に何やら見慣れたものを見つけた。
それと同時にこの状況の全てを悟り、どっと安心感が押し寄せた。
 
 
 

アッシュが見つけたもこもこの右上に浮いていたものはテレビのリモコン。
この城にそんな物理の法則に反した事を行えるのは彼しかいない。
 
 
 

アッシュはゆっくりとソファの後ろまで忍び寄り、白いもこもこしたものに話しかけた。
 
 
 

「こんな夜更けに何やってんスか、ス…」
 
 
 

「ギャアアアアアァァァァァァァァ!!!!」
「うわーーー!!!」
 
 
 

もこもこがあげた叫び声はこの城が山奥にあって良かったと思うには十分過ぎるほどの
音量だった。窓の外の木々で休んでいた鳥達が目を覚まし、外が五月蝿さを増す。
 
 
 

「キャー!キャー!!」
 
「おお落ち着くッスよスマ!!俺ッス!」
 
「キャ…ってアッシュ?もー、今本気で驚いたじゃんかぁ!!寿命縮んだよ!」
 
「スマこそこんな真夜中に何やってんスか!?
それ、今日放送してた心霊現象に関しての特番じゃないッスか!」
 

「そうだよ。だからビデオに撮って今見てたんじゃん」
 
「・・・ハイ?」
 
 
 

白いシーツを身に纏い右手にリモコンを持った井出達で小柄な透明人間は
さらりと不可解な言動を発した。
 

「えーと…俺、さっきスマが言った言葉が良く理解出来ないんスけど…?」
「ハイィーーー!?何だって?」
 

今の一言はこの城一番のテレビおたくの癇に障ってしまったようだ。
 
 
 

「何言ってんのさアッシュ!こーゆう心霊現象とか実際の恐怖体験とか
そんな類の特番はビデオに撮って夜中にシーツに包まりながら観るのが世の常識でしょ!?
あんなもんゴールデンタイムに観るもんじゃあないよ!折角の恐怖再現ドラマの
魅力半減だよ!蛍光灯が煌々と付いた部屋の中で観るのは番組制作スタッフへの侮辱だよ!」
 

リモコン片手に力説するスマイルには何か逆らえないものがあった。
年の功の成せる技、であろうか。
 
 
 

「と、とりあえず判ったからもぅ寝て下さいッス。明日朝早いの覚えてるでしょ?」
 
「大丈夫だよ。年寄りの早起き…ってね~、ヒヒッ
あぁ、でもそれじゃあユーリは若者、って事になっちゃうねぇ。それは一大事」
 
「まったく…んな事言ってる暇あったらさっさと寝るッス。ビデオは逃げねぇッスよ」
 
「ハイハ~イ そんじゃおやす・・・・うわぁお」
 
「どうしたッスか?スマイ・・・ヒッ!」
 
 
 
ドアの前にはこれ以上怖い顔は無いだろうと思うほどの般若顔をして、
腕組みをして仁王立ちしているパジャマ姿のこの城の主…ユーリがいた。
 

はっきり言ってそのパジャマの柄は 「お前センス狂ってんぞ!」
と言ってやりたいほどのものだったのだが、今そんな事を言ってしまえば
自分達の命はない、と言う事位2人にも肌で感じ取る事は出来る。
 
 
 

「お前達…今一体何時か判っているんだろうな…」
 
「い、嫌だなぁユーリ。そんなに怒った顔してたらお肌に悪いよ♪
そんじゃアッシュ、後は頼んだね~☆おやすみいぃぃ」
 

「あ、えっ、ちょっとスマイルーー!!?待って下さ…ぐぇ!」
 

ユーリに強烈な力で首根っこをつかまれたアッシュにそれ以上言葉を発する事は無理だった。
そうこうする間にもスマイルはドアをするりと通り、自分の寝室へと戻って行く。
 
 
 
リビングに静寂が戻った。
 
 
 

「さて…と。お前、私の嫌いなものを覚えているか?」
 

「えぇっと…  退屈 とか… 日光、と か… 」
 
 
 

「そうだな。それは正解だ。
・・・でも実はもぅ1つ、私は嫌いなものがあるんだ」
 

「え?そ、それって…」
 
 
 

「・・・・・・それはな・・」
 
正に嵐の前の静けさ、だった。
 
 
 

「・・・それは私の睡眠を邪魔する奴等だあぁぁぁぁ!!!
 
「・・ッギャアアアァァ・・・・!!!!」
 

誰かの断末魔の様な叫び声に反応し、窓の外の野鳥達が一斉に羽ばたいた。
 
 
 
 
 
 
 

これは、ある1人(匹)のお話。
 
 
 

ある1人(匹)の、悲しい悲しいお話。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
end.
 
□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
 
ごめんなさいごめんなさい。でも書いてみたかったこんなアホ話。
主役アッシュです。彼を主役にするとこんなのばっか浮かびます(うわぁ)
そして結局炊飯器のタイマー時間変更してないので朝又ユーリに怒られます。
スマイルにも馬鹿にされます。悲劇です。いやもぅここまで来ると喜劇か?
とりあえずそんなこんな。連作に疲れたらこんなの書いて行きます。
内容薄いくせにやたら長くて申し訳ありません…
 
もしここまで読んで下さった方がいましたら、本当に有難う御座いました。

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