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花しるべ

「桜御膳」内のFiction別館サイト。取り扱いはポップンミュージック(非公式)が主。 初めての方は〔はじめに〕をお読み下さい。  
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奏でる旋律は誰がために(ヴィルヘルム・ジズ)

貴方に楽譜を貸す理由は…










此の森に無断で御入りになる事は御勧め致しません

貴方は在りもしない出口を探して、永遠に彷徨い続ける事と為ります

余計なモノを極力、此の森に入れたくは無いのです
私の可愛い人形達が吃驚してしまうといけないので…

どうしても用事が有ると仰る方はどうぞ事前に御連絡を
正式なお客様には、丁寧な御持て成しを致しますよ?

 

 

 

 

 

+++奏でる旋律は誰が為に+++

 

 

 

 

キイィィィ…

 

 

キイィィィ…

外からの強風に紛れて、何か微かな音が聞こえた
家の前の門の閂が外れた為だ
はてさて、風による自然なものか、それとも…

 

 

「まぁ、後者でしょうね…そんなに怯えなくとも大丈夫ですよ、めばえ。
此れからやって来る方は正式なお客様です。さぁ、御持て成しの準備をしましょう」

 

めばえと呼ばれた人形は自分の作製者の言葉に頷き部屋を出た

 

 

此の家に人間はいない。
いるのは客人の寄越した鷹と命を吹き込まれた人形達
其の人形を造り出した此の家の主とて、幽霊となった紳士である。

 

 

そして客人としてやって来た者も又、人間ではなかった
其の者は人間離れした白い肌と紅い瞳を持っていたのだから。

 

 

 

「ようこそいらっしゃいました、ヴィルヘルム。
貴方が寄越した鷹はあちらの部屋で休ませていますよ。
長らく貴方にはお会いしておりませんでしたが、御元気そうで何よりです」

 

「あぁ…久方ぶりだが此の城も、其方も変わりなさそうだな、ジズ」

 

 

 

ヴィルヘルムは、自分に必要な事以外には余計な行動をしない人物である
其の為彼が此の家にやって来る理由は数える程しか無いのだが、
それでも訪問理由を毎回尋ねるのがジズの習慣となっていた。

 

 

 

 

「それでヴィル、今回はどの様な御用件で此方へ?」

 
「…此れを返しに来た。私には必要無くなったのでな」

そう言ってヴィルヘルムは数枚の羊皮紙――楽譜をジズに手渡した
彼はジズの保有している膨大な楽譜を借りてピアノ演奏を行っており
その曲を完璧に弾き熟せる様になると、楽譜を戻しに来ていたのだ。

 

「あぁ、それはどうも御親切に有難う御座います。
今回はどうされます?何か弾いてみたい楽曲等は御座いますか?」

「いや、特に無い」

「そうですか。それでは此方等は如何でしょう?
貴方の好みとは少々異なるかも知れませんが、其れも又新鮮かと」

 「
そうかも知れんな…では、其れを借りる事にしようか」

「分かりました。では早速人形達に持って来る様伝えましょう」

 

 

 

人形が新しい楽譜を持って戻って来るのを待つ間に
めばえが二人分の紅茶を淹れてやって来た。

 

 

 

「丁度良い温度に淹れて下さいましたね。有難う御座います、めばえ。
ヴィルの紅茶は此方のカップですね?さぁどうぞ」

 

「あぁ、すまない」

「めばえ、今日はもぅ休んで良いですよ。お休みなさい」

 

めばえはジズとヴィルヘルムに恭しく御辞儀をした後、部屋を出て行った
部屋は又二人となり、静かになる
其の静寂を始めに破ったのはヴィルヘルムの方だった。

 

 

 

 

 

「ジズ、前前から考えていたのだが…一つ質問をしても良いか?」

「おや、貴方から質問を受けるとは意外ですね。何でしょうか?」

 

「何故…何故貴方は毎回私に楽譜を途切れる事無く貸そうとしているのだ?
今までに幾度と無く、私が特定の楽譜を借りる気にならない時が在った。
しかしそんな時は毎回、貴方は自分の薦める楽譜を私に貸していた。今回もそうだ。

 
いや、何も其の事が迷惑だと云う心算なのでは無い。
自分では見付け出せない様な素晴らしい楽曲にも数多く出会えたしな。
只――何故其の様に貴方が努めているのか純粋に知りたいのだ」

 

 

 

 

其れを聞くと幽霊紳士はククク、と小さな声を立てて笑った。
紅色の眼の客人は訝しげな表情をして、次の言葉を紡ぐ。

「…何が可笑しい?私は真面目に話しているのだぞ」

 

「えぇ、分っています。そうですね、理由は二つでしょうか。
一つに、貴方が御礼代わりとして気紛れに演奏して下さる、
此の部屋のピアノの音を聴く事が好きだから。

 
そしてもぅ一つは―――貴方が此の家を訪れる理由作りの為です」

 

「理由…作り?」

 

 


 
貴方の言葉の真意が汲み取れない、とでも言いたげな表情である。

 

 

「はい。楽譜を貸しておけば、貴方はきっと“仕事前”に此の家を訪ねて下さいますから。
そして貸した楽譜を返しに来て下さった時に、貴方の無事が確認出来ますから。
まぁ、貴方の御仕事の成功を祈る御呪い…といった感じでしょうか。
友人が怪我をしたり、居なくなってしまうのはやはり嫌なものですからね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 
部屋に暫しの静寂が戻る。
少し悲しげな顔で、ヴィルヘルムが口を開いた。

 

「ジズ、私は…」

 

「良いのですよ。貴方が誰も“友人”と認識していない事は知っています。
余計な感情に因って仕事に支障が出ない様に、特定の大切な人を作らない事を。
其の為どんな方でも“知人”としている事も。
それでも私にとってヴィルヘルム、貴方は大切な友人の一人なのです。
友人の無事を確かめる為、繋がりを絶やさぬ様努めるのは可笑しい事ですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

カチャ

 

キィ・・・

 

 

 

「おや、楽譜を取りに行っていた人形が戻って来た様ですね。
どうも有難う、疲れたでしょう。今日はもぅ部屋に戻ってお休みなさい。

 

 
…さぁヴィルヘルム、どうぞ此れを。
きっと又、“貴方が楽譜を返しに来て下さる”事を望んでいますよ」

 

 

 

 

 

 

 

「必ず此の楽譜を返しに来ると約束しよう…近い内にな」 

「お待ちしています。それでは、御気を付けて」

「あぁ。行って来る」

 

 










私の友人であり正式な客人は

遣って来た時と同じ様にマントを翻し
遣って来た時とは違う微かな笑みを浮かべ

 
そしてまた、闇の中へと戻って行ったのです。

 

 

 

Fin.

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

やってしまいましたヴィルジズ話。ジズさんは友人想いだよな、とか勝手に想像してみたり。
ヴィルヘルムにとってもジズは「友人に限りなく近い、尊敬できる知人」だと思いたい。

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