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花しるべ

「桜御膳」内のFiction別館サイト。取り扱いはポップンミュージック(非公式)が主。 初めての方は〔はじめに〕をお読み下さい。  
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夜半過ぎの談話と来訪者(ヴィルヘルム・ロキ)

その変化を、喜ぶがいい。








名誉も 富も 美も彼女の前には無価値だ

誇り高き一族の彼女は自然の理に抗うことなく生きている
そして持って生まれた知恵と能力で多くの者の願いを叶え 救ってきた

 

 

今回の話は そんな彼女の人生の中での極極些細な出来事。

 

 

 

 

 

 

 

 

+++夜半過ぎの談話と来訪者+++

 










 

漆黒の葉が生い茂る森の奥深くに 紫屋根の小屋がある
壁のある一面は本や羊皮紙で埋め尽くされ 今にも崩れ落ちそうな程
別の壁に目をやると 何やら妖しく光るものや無数に積まれた瓶の棚
其の家に銀髪で白い肌 緑の瞳の下を赤く縁取った魔女がいた
今は夜も更け 辺りから物音は全く聞こえない
しかし彼女の耳には 訪問者の到着が直ぐに分かった。

 

 

 

「…何をしておる。そこにいるのは分かっておるのだ。早ぅ入れ」

 

普通の人間から見ればそれは只の独り言のようだっただろう
だが彼女の独り言じみた発言の後 誰もいない筈である家の前から人の形が現れ始めた
それは段段と色を濃くしてゆき やがてマントを羽織り紅い髪と瞳を持つ人物となる。

 

「やれやれ、直ぐに分かってしまいましたか…暫く振りです、森の魔女よ。
出会った時と相も変わらず美しい容貌のままで…」

「つまらぬ世辞など要らん。此処に来たからには何か用があるのだろうが。
手短に申せ。約束の刻限より遅く来おって…儂とて暇な身ではないのだぞ」

 

「まぁそう急かさずに。
それに、多少遅延するやもしれぬと私の使いが前もって伝えている筈ですが…」

 










来客者がそう言いながら椅子に腰掛ける間に 魔女は人差し指を
机の上にうず高く積まれた本と 火の消えていた蝋燭に向ける
書物達はふるふると震えた後 独りでに本棚へと戻り
蝋燭には ふ、ふ、と順に灯りが灯されてゆく。魔女が答えた。

 












「その使いの鷹だがな。こやつ、儂の黒猫にちょっかいをかけようとしたのだぞ。
全く、家畜は飼い主に似るとはよく言ったものよの」

「それはとんだ失礼を。後で良く言い聞かせる事にしましょう。
ところで本日の用件ですが…又、貴女の御力をお貸し願いたいと思いまして」

 

「ふん、そんな事だろうと思ったわ。今回は如何様な願いなのか、具体的に話せ」

 

そう言いながら魔女は空中で一度 指を鳴らした
何処からともなく紅茶の入った容器が二つ 湯気を立てて机の上に置かれる。

 

 











「砂糖は、五杯だったな」
「えぇ、そうです。良く憶えていて下さいましたね」

 

「戯け。世の理を逸脱した御前のこの嗜好を忘れる方が難しいわ」

 









この日初めて 魔女が笑みに近い表情を見せた。

 

 

 

 

++++

 

 

 

 

 

「…燐粉を分けて欲しいと?どの蝶のものを欲しておる」
「麻痺作用のあるものを。強力であれば、尚好いのですが」

 
「ならばレビシチョウが好かろう。極微量でも、一刻半は自由に動けん筈だ」

 
「では其れを。感謝します、森の魔女」

 
「別に構わぬ。儂と御前との此の関係は今に始まったものでもないしな。
しかし御前程の力の持ち主に、今更此の様な物は要らぬ様に思うのだが…」

 
「いえ、私が使うのではありません。ジャック達の為です」

 

 

 

 

 

「ジャック…?
あぁ、確か以前、2人の子どもを拾ったと言うておったな。其の者達の名か」

 

「えぇ、そろそろ実際に“仕事”を行わせてみようと思うのですが
まだ若干の不安がありますので、一応持たせておこうと思いましてね」

 

 
魔女は椅子に深く腰掛け直し 来訪者の顔をもう一度よく見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほぅ・・・御前も変わったな、ヴィルヘルム。
以前の御前は、役に立たぬ者は情け容赦なく置き捨てていったものだが」

 

「そうですか?まぁ、確かに多少の心境の変化は認めますが…」

 

「儂には大きな変化に見えるがの。まず、御前の瞳に映るものが変わっておる。
何か大切なものを護ろうとする強い意志と力が加わった。

 
自分よりも大切なものを見つけるという事は大きな賭けでもある。
其のものを護ろうとするがあまり、確固たる信念や自己を見失うからな。
現に儂は今迄に素の様な者を幾人も見てきた。

 
御前の場合は…好い方向に働いた様だ」

 
燐粉を用意してくると言い残して席を立ち 紅眼の客人に聞こえないように
御前を変えた其の者達が少し羨ましいな 魔女は小さく独りごちた。

 

++++

 

「それでは御暇するとします。あいつ達にも礼を言わせておきますよ」

「まぁ、其れを使わんでも事が済むことを願うがな。
御前も、己の身体を良く考えて力を遣えよ…“知人”からの忠告だ」

 

「…心掛けておく様にしますよ。ご忠告、感謝します」

 

 
ヴィルヘルムは玄関の扉へ向かいながら
嗚呼そうでした と独り言の様に呟いた。

 

「大変申し訳ないのですが…何時かまた此方に突然御邪魔するかと思います。
具体的な期間は判らないのですが、先日それが視えました」

 

「…そうか。全く、御前の予知も中途半端な力だな。
何の前触れもなく突如頭に未来の一場面が映るというのだから。
それにしても連絡も無しに儂の家に来るとは…」












 
本当に邪魔だな 魔女は悪びれる様子も無く言い放った
手厳しいですねぇ 赤髪の来訪者は苦笑する。

 






「まぁ、何か余程の訳が有るのだろう。御前は無意味な事はしないからな。
では其の時が来るまで、精精家の掃除でも力を入れておくかの」

「有難う御座います。ではまた、何時か必ず」

 

「嗚呼、また何時か会うとしよう。息災でな」

 

 

 

 

森の魔女は満月に向かって飛び立った来訪者を見送り
また自分の生活へと戻っていった。

 

 

 

Fin.

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

書けました、ヴィルロキ話。妄想炸裂で申し訳ないです…
ロキはあんな口調だったら良いな、とか考えてました。毒舌だったら良い!
ヴィルヘルムは俺様主義ですが、
自分が敵わないと認めた存在にはそれに相応しい振る舞いをします。

ただその人数はかなり少ないと思われます/
後レビシチョウという蝶は実在しません。
単に“しびれ”を逆からとっただけです(オイ)

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