ぼくらのけんかばなし・α（スギレオ）

負けず嫌いが２人集まるとこうだから。

拝啓、これを読んでくれている貴方へ
この前発売した新曲、褒めてくれてどうもありがとう。
でも実はアレが完成するまでには、色々と紆余曲折があってね・・・
今回は特別に君にだけ、そんな裏話をこっそり教えちゃうよ

 

 

＋＋＋ぼくらのけんかばなし：α＋＋＋

 

 

 

「・・・暑い暑い暑い暑いいぃぃぃ」

「ハイハイ。分かったから扇風機占領するのは止めて、レオ君」

  

季節は夏。というより真夏。
スギと共同で住んでいるマンションにも夏の日差しがじりじりと照りつける。
都会の夏はヒートアイランド現象よろしく、冷風なんて吹きやしない。
もともと暑さに弱い人間にはこれだけでも参るのに
何と部屋のエアコンが故障したのだからたまらない。
電気屋に連絡をしても、修理には後三日かかると言われた。

まぁ基本アナログ生活な人間（つまるところスギ）にはあまり影響もないようだけど
これはデリケートな人間（つまるところボク）には死活問題であって。

 

 

 

「レオ、あんまり近くでごろごろしないでよ、暑苦しい。
暇ならこの前依頼受けたあの仕事、さっさと片付けちゃったら？」

 
あの仕事　とは、あるCMでの使用目的で書かれた詞に曲をつけるというもの。
しかし本当に暑くて何をする気にもならない時は、つい返答にも棘が出てくる。 

 

「えー、アレはボクが個人で引き受けたものじゃなく、スギレオ名義でしょ。
ボク1人に押し付けようとしないで、スギがやったっていいじゃん」

「別に押し付けようとなんて思ってないよ。ただ、僕は今個人の仕事抱えてるんだから
レオがすすめてくれたって良いんじゃないかなって思っただけ。
レオは作曲担当なんだから、そういうのは君の方が得意だろう？」

「でもスギは僕の考えた曲に対してすぐには納得しないでしょー。
完成までに必ず1回は編曲するじゃない。曲作りはスギだってやれるよ。
それに納期はまだ先だけど、ボクだって個人の仕事があるんだ」

 

 
1秒。
２秒。
３秒。

 

 

 

 
お互いにしかめ面をしたまま口を開こうとしない。

 

 

 

 
４秒。
５秒。

 
スギがわざとらしい大きなため息をついて、こう言った。

 

「わかった。つまり君はこの仕事をボクひとりに押し付けるな、スギ。
時間があるとか無いとか関係ないだろうお前もやれ。こう言いたいんだね」
「いや、何もそこま・・・」
「じゃあ勝負しよう」

 

「勝負ぅ？」
「そ。勝負だ。お互いに曲をつけて、どちらがクライアントにOKを貰うかどうか。
負けた方は罰として１つ何でも相手の言うことをきく。それなら文句無いだろう？」

 

 

 

 
６秒。
７秒。

 

 

 

 
ここは素直に謝ろうと思ってたのに、そんな提案しますかスギさん。
でもそれはちょっと面白そうかも、なんて思ったりするボクもボクかな。

 

 

 

 

「よっし、のったよその勝負。負けないからな」

「望むところだね」

「それと完成まで勝手に相手の部屋に入るのも禁止だから」

「ふん、誰がするかいそんな無意味な事」

 

 

 

 
８秒。
９秒。

 

 

 

 

心なしか部屋の空気が冷たくなってゆく。
それは多分お互いに冷たい闘志を燃やし始めたから。

 

「逃げるなよ」

「そっちこそ」

 

 

 

 

 

 

 

 

こうしてボク達は
同じタイミングでドアを閉め

 

同じタイミングでイスに座り

 

 

 

「「　絶対に、アイツより良いものつくってやる　」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

１０秒。

同じタイミングで、こうつぶやいた。

 

 

 

 

 

 

 

結局どちらの曲も甲乙つけがたく、
２種類のCMを使用するという形で両方採用された…って訳だよ。
まぁ、僕等のことだからこれがどこまでホントの話かは保障しないけど。
それじゃまた、気が向いたときに。　　　　　　　　　　　　　　

 

敬具

 

 

 

 

 

 

Fin.

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スギレオ喧嘩話その１。彼等は喧嘩すら物語になります。
日常の喜怒哀楽、全てを楽しんで過ごしてるんだろうなぁ、とか考えてみたり。