「・・・何だと。明日の誕生日に間に合わなかったというのか?」
「いいえ、間に合ってはいます」
「では出来ているのだろう」
「そうですネェ。出来たといえば出来ているし、まだといえばまだです」
「どういう事だ。儂をからかっているのか」
のらりくらりと質問をかわすスマイルを横目に、俺の頭は混乱していた。
まさかこの人、本当に作らなかったのか?
いや、そんな筈は無いだろう。
しかし――
あーあ、どうも気が乗らない。投げ出しちゃおうかなー・・
あの時のスマイルの言葉が、そうしても脳裏を掠める。
スマイルの事を完全に信じることが出来ない自分自身に、強い怒りを感じた。
「もぅ良い、話にならん。契約は取り消させて貰う!」
怒髪天衝を再現したかの様な表情。富豪家の怒りはおさまりそうにない。
杖を振り翳してスマイルを睨み、大声を張り上げた。
最初から儂はこんな男、信用ならんと思っていたんだ。
それをあの娘がどうしても、と言うから・・・
大方、容姿で持て囃されているだけで
其れに見合った実力なぞ持ち合わせていないのだろう!
「……っちょ、…待ってください!」
「! アッシュく…」
「スマイルはそんな人じゃねえ!
なんにも知らねぇくせに、勝手なこと言ぅッ… ……言わないでほしいっス!!」
言葉が勝手に、口を突いて出てきた。
確かにスマイルが何を考えているかなんて、俺にだって良く分からない。
もしかしたら本当に今回、曲を作らなかったのかもしれない。
でも、渡された少女の資料はいつだって持ち歩いていた。
それに、普段スマイルが音楽に向き合う姿勢を考えると
一生懸命に曲を作っているスマイルの姿しか、俺には想像できなかったから。
暫し、静寂が部屋を包む。
その静寂を破ったのは、ユーリの足音。
コツ・・・
コツ・・・
バシッ
「痛ぁ。ユーリ、何すんのさ~」
と、間の抜けたスマイルの声だった。
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