「日常生活が退屈でつまらない」
そう思える君って本当は相当な幸せ者なんだよ?
人生、平凡が一番幸せなんだから
今でこそボクだってこんな生活もありかな、と思えてきたけど
もし、神様が「一度だけ好きな所から人生のやり直しをさせてやる」
と言ってきたら・・・
ボクは迷わずあの日の夜に戻してもらうね。
そんな事有り得ないって分かってるけど…戻れるのなら戻りたい。
サァ、悪夢ノ始マリ始マリ。
+++ missed daily.1 +++
「痛たた・・」
どのくらいの間、気を失っていたのだろうか。
外の景色は既に夕刻を過ぎた感じだった。
周りを見ると、そこには砕け散った鏡の破片と火の消えた蝋燭。
部屋中に煙のにおいが充満している。
「・・・何だ、結局何にも起こらなかったじゃないか。
やっぱありえないよね、透明人間になるなんてさ。
あーぁ、鏡割っちゃったのママに何て言って誤魔化そうかなぁ?
でも、とりあえず散らばった欠片集めとかな き ゃ ・・・?」
その時のボクの驚き様は普通じゃあ無かったよ。
だって、いつもそこにあったはずの右腕が、見えなくなってたんだから。
「ウ・・ウソ・・!?」
急いで左手で右腕を掴む。
掴めた。ちゃんとボクの右腕はある。左手も。
只・・・そこに「ある」ようにはとても見えなかった。
ボクの体は今、完全にあるべき色を持っていなかったから。
「これって――・・」
もしかしなくても、考えられる事は1つしかなかった。
「まさか、さっきのが成功してたの?
それで、ボクは透明人間になっちゃった、って訳・・?」
実験が成功した。透明人間になれた。それが、単純に嬉しかった。
これから起きる、最悪の事態なんて頭にもなかった。
本当にあの時のボクは愚かだよねぇ。
まぁ、今更何を言っても・・何を思っても無駄なのは分かっているけど。
「凄いすごーい!本当に見えなくなっちゃってる。
わ、足の方も!洋服しか見えない!大成功じゃん!」
―――アレ?でもそうすると、ボク自身って自分でも見えなくなったのかな?
そんな疑問がふと頭に浮かんだ。
だから、さっき割れてしまった鏡の破片で自分の姿を映してみたんだ。
―――――・・!!
そこに、確かにボクは映っていた。
肌と髪の毛の色は「蒼」
瞳の色は「紅」になってしまっていたボクだったけど。
「う、わ ・・。凄い、まさか色まで変わっちゃってるなんて。
もぅこれで誰だか完璧に分かんないよね。
よっし、これからはもぅ何をしても見つからないぞー!」
時計を見るとそろそろ夕御飯の時間だ。
それじゃ、まず初めはママをビックリさせちゃおっと…!
何をしても誰にも見つからない体を手に入れたボク。
その時は、もぅそれが嬉しくて嬉しくてたまらなかった。
イタズラ小僧にとって、そんな体は願って止まないものだったから。
でもすぐに、ボクは大きな大きな勘違いをしていた事を思い知らされた。
何をしても誰にも「見つからない」 と
何をしても誰にも「気付いてもらえない」 は全く別物だった、って事に。
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