ボクはこの頃、何もかもが嬉しくてしょうがない。
それは、もうすぐあの日がやってくるから。
+++真実へのカウントダウン+++
「おはよー!ユーリは今日も朝寝坊?朝は清々しくて気持ちがよいのに~」
「…闇の眷属は元より朝に弱いのだ。お前と出会ってこれでも早くなったのだぞ」
寝起きでいつもより少し機嫌の悪いユーリにさっと紅茶と今朝の新聞を出す。
これが毎日の日課の1つである。それともう1つ。
「あ、昨日のカレンダー破いてこなくちゃ」
日めくりカレンダーの昨日の日付を破るのもボクの日課だった。
ビリビリ・・
ビリ・・
(後5日かぁ…)
当日のことを考えると、自然と笑みがこぼれる。
そんなボクを横目で見ながらユーリは新聞に目をやった。
「・・・どうした、やけに嬉しそうだな」
「そりゃあそうだよ。だってもうすぐパパとママの結婚記念日だもの!」
ユーリは読み始めていた新聞から顔を上げた
「両親の結婚記念日というものは、其れ程までに喜ばしいものなのか?」
「うーん、何処でもとは一概には言えないけど、ボクの住んでた地域はそうだったよ。
毎年家中をきれいに飾り付けして、ご馳走も準備してねぇ。
『私達が出会えたから、私達は夫婦になれた
私達の元に貴方がやって来てくれたから、私達は家族になれた』…って。
そういってから、皆がそれぞれ考えたプレゼントを家族に渡すんだ。
パパはママとボクに、ママはパパとボクに、ボクはパパとママにね」
ユーリは黙って新聞のページをめくり、読み続ける。
それは無言の「話を続けろ」というサインだと、僕はよく知っていた。
「パパからは本、ママからはお菓子を貰うことが多かったかな。
ボクはいつも2人にお花をあげていたの。両腕でやっと抱え切れるくらいの花束を。
でも、結婚記念日の1ヶ月前に“あの日”があって、2人の前から消えちゃったから…
もぅここ数十年はプレゼントを渡してないなぁ」
もうすぐ100年目に突入しちゃうかもね、と冗談っぱく付け加える。
がさがさと新聞をたたんで、ユーリが口を開いた。
「では行くか?」
「行くって、どこへ?」
「お前の故郷へだ。そこまで楽しみだった記念日なのだろう?
その時渡せなかった花束を持っていってやればいい」
え?
「ちょ、そんないきなり…!何の準備も出来てないし!」
「記念日までまだ5日あるのだろう。贈り物の準備等は道中にするとして、
今から出発すれば十分間に合う」
「まぁ、それはそうだけど…
って何でユーリがソレを知ってるのさ!」
「先程カレンダーを破りながらお前が言ってたのだろう。後5日だと。」
吸血鬼の聴力をなめるなと言い残してユーリは再び新聞を読み耽る。
今度から絶対独り言は言うまい。
ボクは心に誓った。
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え、何でこんなにユーリさんアクティブなんだろう(自分で書いといて)
スマイルが過去と、そして現実と向き合う話。続きます。
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