ジリリリン
ジリリリリン
電話のベルが鳴っている。
この電話は取らないほうが良い
ボクの第六感がそう告げている。
嗚呼、それなのに今この電話を取れる状況にあるのが城内でボクだけだなんて!
自分から面倒事を引き寄せてきちゃうこの性格が恨めしいよ。
+++神様のたまご+++
「ハイ、もしも――」
「おっ、スマイルか?丁度良かった。俺だけど」
俺さん だなんて名前の知り合いはいません…と言いたい所を止めておく。
この声はMZDだ。いわずと知れた神様がボクみたいな平民に何の用だろうか。
「お前明日、時間あるか?ちょっと渡したいものがあるんだわ」
「明日?」
後ろをふり返ってカレンダーを見る。
明日は午後から雑誌のインタビューが入っているが、午前中なら問題ないだろう。
「えっと、ご――」
「午前中なら大丈夫なんだな?じゃあ明日10時に城の正門前で」
それだけ言い残して電話は一方的に切れた。
相手の考えを先読みする彼の特技によって、いつも会話の主導権を握られてしまう。
ボクにその芸当が出来る人は数えるほどしかいない。
そんな貴重な人物に個人的呼び出しをくらったのは、何とも複雑な気持ちだった。
+++
「よーっす、久しぶり。元気だったか」
彼が待ち合わせ場所に現れたのは約束の時間ぴったし。
相変わらずセンスがあるのかないのか良く分からない服装をしている。
「お前達が本業で頑張ってるのは見てるけどな。
たまにはこっちのパーティにも顔出せよー?皆待って」
「ちょっと。早く本題に入ってよね。午後から仕事だって知ってるでしょ」
おお怖い、久々の再会だぜ?
もうちょっと世間話くらいしても撥は当たらんと思うぞ
彼はわざとらしく肩を狭めながらポケットに手を入れ、何かを取り出した。
「これ、なーんだ」
MZDの手には、ボールの様な物体が。
ただ、これは色といい、形といい…
「たまご、かな」
「ピンポーン、大正解」
「・・・で、一体何のたまごなのさ」
まさか只の鶏卵を見せに来たわけではないだろう。
というかそう信じたい。
「お、やっぱり気になる?気になっちゃう?」
彼の飄々とした笑顔が輝く。
嫌な予感がしてきた。
「これはな、夢のたまごなんだよ」
「・・・ハイ?」
彼の説明によると、
そのたまごは孵した人によって異なるものが生れるらしい。
孵し主の考えや思いを栄養にして育つそのたまごから生れるものは
動物、植物の種、機械、果ては新しい公式や旋律などなど。
何が出てくるかは全く予測がつかないそうだ。
「ただな、変わった奴が孵した方が面白い結果になるらしい」
「そりゃあね。変人は何考えてるか分かんないし」
「そこで、だ。
スマイル、是非お前にこのたまごの親になって欲しいんだけど」
嫌な予感はしてたんだ。
+++
予想通りに予想外の依頼をされたボクは迷っていた。
考えた結果、彼の返答で決めようという結論に至る。
「・・・ねぇ、1つ質問していい」
「どうぞどうぞ、俺が応えられるものなら何なりと?」
「君の知っている人達の中で、ボクってそんなに変人なの?」
ボクの質問にMZDはうーん、と腕組をして考え始めた。
「いや、唯変わった奴ってだけなら、お前以上に変な奴は沢山いる。
でもな―・・」
変わってて、その上面白い奴って考えるとだな、お前が真っ先に浮かんだんだよ
そう言ってMZDはにやりと笑った。
まいった。
この人には敵わない。
「何だよそれ。不名誉だなー・・・」
といいつつも、ボクの口角が上がっていることぐらい彼にはお見通しだろう。
「分かったよ、やれるだけやってみる。
で、ボクはそのたまごが孵るまで温め続ければよいの?」
そうそう、簡単だろ?
じゃあな、うんと面白いヤツの誕生を期待してるぜ
そう言いながらボクの手にたまごを落として、彼はまたどこかへ消えていった。
きっとまた、誰かの願い事を叶えるために
ボク以上に変な奴ってどんな人なんだ、とか
孵った後はどうやって君に連絡すれば良いんだよ、とか
言ってやりたいことは山ほど残っている。
だけど不思議に嫌な感じはしない。
彼はきっと、ボクの考えを先読みして、絶妙のタイミングで
連絡する機会を与えてくれるだろうから。
歌うのと悪戯が大好きな3匹のお化けがたまごから生まれて
この子達と一緒に歌った曲をMZDに聴かせるのは、もう少し先のお話。
fin.
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RGBの生みの親はスマイルだと言い張ってみます。頭から生えた葉っぱ(いろはスマイル)を取る実験を
していた際にRGBが生れた、と設定されているサイトを多く見かけたので、ちょっと違った
設定にしてみました。MZDも好きなので、絡ませることが出来て楽しかった!
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