パパはこの本を持っていた自分が悪いと言い
ママはあの日スマイルを一人にした自分が悪いと言い
ボクは軽はずみな判断でこんな行いをした自分が悪いと言った。
本当に悪いのは誰なのかなんて、判りきった問題だったのに。
+++永遠にさよなら+++
次の日からボクは学校を病気という理由で休むことになり
お見舞いに来たボクの友人達は、ママがボクに会わせようとしない事を不思議に思った。
ボクはあの夜以来満足にものに触れられなくなってしまい
意識を集中しないと椅子に座りペンを持つことも
壁に手を付けることも出来なかった(簡単に通り抜けてしまうのだ)
パパとママの疲れは日に日に酷くなっていき
真夜中まで2人が話し合っている姿を毎夜見るのは辛かった。
そしてあの日から1週間が経った夜。
パパとママは真面目な顔をして言った。
「スマイル…パパとママは、お前を元の姿に戻す方法を探すために出かける。
どんな僅かな希望であっても、その望みにかけてみるつもりだ」
「貴方はそれまで此処で私たちの帰りを待っていて欲しいの。
パパとママからの約束よ?守れるわね?」
あぁ、これは嘘だ。
パパとママはきっともぅ、此処には戻ってこないだろう。
こんな不気味な子ども、パパとママだって要らないもの。
だからボクも2人に最後の嘘をつくことにする。
パパ、ママ。本当にごめんね。
「うん、分かった。パパとママが帰ってくるのをちゃんと待ってる。約束」
++++
「スマイル、いい子にしているのよ」
「私達は必ず帰ってくる。それまで…待っていてくれ」
「大丈夫だよ。パパとママこそ気をつけてね。
…いってらっしゃい」
ボクは精一杯の笑顔で2人を見送った。
パパとママに、この笑顔が少しでも記憶に残るように。
ボクはいつも笑っていたと、思い返して貰えるように。
その後ボクは家中のものに ありがとう と言って回った。
満足にものに触れられない今のボクには、それ位しか出来なかったから。
さぁ、この家に別れを告げるように
そっと扉を抜けよう。
大丈夫、寂しいことはない。
パパとママにちゃんと、さよならを言うことは出来たから。
こうしてボクはひとりになった。
満月の光がやけに眩しい、冷ややかな夜のことだった。
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